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手作業の塗布をやめられない現場に、共通していること

2026年7月6日

放熱材や接着剤の塗布工程だけが、いつまでも手作業のまま残っている。
そんな現場を、私はこれまでにいくつも見てきました。

生産技術の橋詰です。
電子部品メーカーで20年ほど、パワーモジュールや車載ECUの組立ラインを担当し、いまは中小の製造業さん向けに工程改善のお手伝いをしています。

正直に言うと、私自身も昔は「ここは人の手のほうが早い」と思っていた側の人間でした。
その考えが変わったきっかけも含めて、手作業が残り続ける現場に共通する構造をお話しします。

人手不足は、もう「そのうち」の話ではない

厚生労働省の2026年版ものづくり白書によると、製造業の就業者数は2002年の1,202万人から、2025年には1,033万人まで減りました。
20年あまりで170万人近い減少です。

それでも塗布工程が手作業のまま残るのは、たいてい次のような事情が重なっています。

  • 塗布の良し悪しを判断できるのが、特定の熟練者だけになっている
  • 品種が多く、段取り替えのたびに装置を止めるくらいなら手でやったほうが早いと考えている
  • 過去に自動化を検討したが、材料が変わるたびに条件出しが必要で断念した
  • 不良が出ていないので、改善の優先順位が上がらない

「不良が出ていない」の中身を疑ってみる

私が現場で最初に確認するのは、四つ目の項目です。

以前担当したラインで、塗布量を実測したことがありました。
図面上の指示に対して、平均で1.4倍ほど盛られていたのです。
作業者に悪気はありません。
足りないと熱がこもって不良になるので、余裕を見るのが当たり前になっていただけでした。

手作業の塗布は、不良として表に出ないぶんだけ厄介です。
塗りすぎても機能上は問題なく流れてしまうため、材料費の超過という形で静かに損失が積み上がります。

放熱材は特にそうです。
富士経済の車載電池用TIMの市場調査では、この市場は2035年に1,524億円まで拡大する見込みで、その約8割を放熱ギャップフィラーが占めるとされています。
単価の高い材料を、感覚で盛っている。
そこに気づいた時点で、自動化の投資対効果の計算はかなり変わってきます。

2液性樹脂は、人の手が最も苦手な領域

もうひとつ、手作業の限界がはっきり出るのが2液性の樹脂です。

主剤と硬化剤を混ぜて使う材料には、混ぜ始めてから硬化が進むまでの可使時間があります。
ここで現場が抱える難しさは、おおむね共通しています。

  • 混合比がわずかにずれるだけで、硬化後の物性が変わる
  • 可使時間内に使い切れず、残りを捨てることになる
  • 混ぜ方が不十分だと、部分的な硬化不良につながる
  • 高粘度の材料ほど気泡を巻き込みやすい

どれも作業者の熟練度でカバーできる範囲を超えています。
特に混合比は、手で計量している限り誤差をゼロには近づけられません。
硬化不良が出たときに、材料のせいなのか混ぜ方のせいなのか切り分けられないのも、手作業の現場でよく起きる問題です。

だからこそ、計量から混合、吐出までを装置側で一貫して管理する考え方が現実的になります。
条件が数値として残れば、トラブルが起きたときの原因追跡もできるようになります。

最近は協働ロボットと組み合わせた構成も出てきました。
実際の動きは放熱用2液ギャップフィラーの計量・混合吐出をロボットで実演したデモで確認できるので、イメージが湧かない方は一度ご覧ください。
安全柵を立てずに人の作業台の横へ置ける構成なら、ライン全体を組み替えずに塗布工程だけを切り出せます。

少量多品種でも、切り出せる工程は必ずある

「うちは品種が多いから自動化には向かない」という声もよく聞きます。
ただ、全工程を一気に置き換える必要はありません。

私がおすすめしているのは、次の順序で考えることです。

  • 生産数量が多く、材料が固定されている品種を一つだけ選ぶ
  • その品種の塗布量と作業時間を実測し、現状の数字を出す
  • 同じ材料でテスト塗布を依頼し、精度と段取り時間を比べる
  • 効果が確認できてから、対象品種を広げる

最初から全社最適を狙うと、条件出しの負荷に耐えられず頓挫します。
一品種で数字が出れば、投資の判断は現場ではなく経営の話になります。
そこまで持っていくのが、生産技術の仕事だと私は考えています。

まとめ

手作業をやめられない現場に共通しているのは、技術的な壁よりも「困っていないことになっている」という状態のほうです。

まずは塗布量のばらつきと材料の廃棄量を、一週間でいいので実測してみてください。
数字が出れば、社内の議論は驚くほど進みます。

装置メーカーの多くはテストルームを備えていて、自社の材料を持ち込んで試せます。
判断材料は、想像より簡単に手に入ります。