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群馬発・廃プラ再生のスペシャリスト企業を調査——印象に残った3つのポイント

2026年4月24日

廃プラスチックのリサイクルというテーマで取材を続けていると、たまに「これは紹介する価値がある」と感じる中小企業に出会います。今回お話しするのは、群馬県太田市に本社を構える、ある廃プラ再生スペシャリスト企業の話です。

私、藤巻涼介と申します。元々は大手化学メーカーの研究開発部門でエンジニアリングプラスチックの素材設計を10年ほどやっており、4年前に独立してからは、再生プラ・サステナブル調達・脱炭素経営をテーマに取材と執筆を続けています。B to Bメーカー向けのCSRレポート制作支援も並行してやっているので、リサイクル業者の現場には年に何度も足を運びます。

今回取材した企業を見ていて感じたのは、廃プラリサイクル業界で「中小プレイヤーの存在感」がここ数年で大きく変わってきているということです。かつては大手化学メーカーや巨大な処理業者が話題の中心でしたが、今は地方発の専門企業が、グローバル基準の認証や独自の技術で確かな存在感を示し始めています。

この記事では、その企業を取材して印象に残った3つのポイントを共有します。製造業のCSR担当者、製品開発担当者、調達責任者の方にとって、サプライヤー選定の判断材料になれば嬉しいです。

まず押さえておきたい、日本の廃プラスチック事情

ポイントの話に入る前に、業界の現在地を簡単に整理しておきます。これを知らないと、紹介する企業の取り組みの「凄さ」が伝わりにくいからです。

911万トンの行き先と、20%という数字

一般社団法人プラスチック循環利用協会が公表した最新の2024年マテリアルフロー図によると、2024年の日本の廃プラスチック総排出量は911万トン。前年比で1%の増加です。

この911万トンが、どう処理されているか。

処理方法比率処理量
マテリアルリサイクル20%約180万トン
ケミカルリサイクル3%約23万トン
サーマルリサイクル67%約608万トン
単純焼却・埋立11%約101万トン

有効利用率は89%とされていて、数字だけ見ると優秀です。ただ内訳を見ると、ほとんどが「燃やして熱を回収する」サーマルリサイクル。素材として再生される割合はわずか20%にすぎません。

サーマルリサイクル偏重という構造的な問題

日本の有効利用率89%という数字は国内では誇らしげに語られますが、国際的には「リサイクルではなく単なる焼却」と見なされる場面が増えています。EU基準ではサーマルリサイクルはエネルギー回収であってリサイクルにカウントしない、というのが一般的な扱いです。

実務的に何が起きるかというと、海外ブランドや欧州系の調達担当者と話すとき、「貴社のリサイクル材は本当に物質として循環していますか」という質問にきちんと答えられないと商談が進みません。サーマルリサイクル前提のサプライチェーンでは、グローバル取引で不利になりつつあるのが現実です。

ここで需要が高まっているのが、マテリアルリサイクルを真面目にやる中小プレイヤーの存在です。大手のサーマル処理ではカバーできない領域を、技術力と認証で埋めていく。今回取材した企業も、この流れの中で位置付けられます。

中小プレイヤーの存在感が増している背景

ではなぜ今、中小製造業のリサイクル企業が注目されるのか。理由は3つあります。

  • 大手では非採算となる「難リサイクル素材」を扱える機動力がある
  • 認証取得や工程改善のスピードが速く、サプライチェーンの透明化に対応しやすい
  • 海外調達担当者にとって、専門特化型の中小企業の方が品質保証の説明がしやすい

つまり、「規模」よりも「専門性」と「説明可能性」が評価される時代に入ったということです。この前提を踏まえた上で、今回取材した企業のポイントに入ります。

印象に残ったポイント1:「リサイクル不可」とされた素材を扱う技術力

最初に驚いたのが、この企業が手がけている樹脂の種類の幅広さです。50種類以上に対応しており、汎用プラスチックからスーパーエンプラまで、ほぼあらゆる樹脂が射程に入っています。

インサート成型品とメッキ品、長年の業界課題

廃プラリサイクル業界に長くいる人なら誰でも知っていますが、リサイクルが特に難しい素材として「インサート成型品」と「メッキ品」があります。

インサート成型品は、プラスチックの中に金属部品(ナット、軸、コネクタピンなど)が埋め込まれた成形品のこと。自動車部品や家電製品に大量に使われています。問題は、樹脂と金属が物理的に一体化しているため、分離せずに再生工程に入れると金属が混入して品質が落ちます。手作業で外すと膨大な工数がかかり、コストが合いません。

メッキ品も同様に厄介です。樹脂表面に金属薄膜が付いているため、見た目は金属、中身は樹脂、という素材。装飾性や導電性を出すために自動車内装、エンブレム、化粧品容器などで多用されます。しかしメッキを剥離して純粋な樹脂に戻すには、化学処理や物理処理の高い技術が必要で、扱える業者が限られていました。

これらは「リサイクルしようがないから焼却」と判断されることが多かった素材群です。それを分解・精製して純度の高い樹脂に戻す技術を持っている、というのは率直に評価したいポイントでした。

50種類超の樹脂対応が示す技術の幅

対応樹脂を整理するとこうなります。

樹脂カテゴリ主な樹脂用途例
汎用プラスチックPP、ABS、PS など容器、家電外装、玩具
エンジニアリングプラスチックPC、POM、PET など自動車部品、電子機器筐体
スーパーエンプラPPS、PTFE、PEEK など航空宇宙、医療機器、半導体製造装置
難リサイクル素材インサート成型品、メッキ品複合素材製品全般

50種類というのは、単に数が多いというだけの話ではありません。樹脂ごとに融点も化学的性質も違うので、対応するには樹脂判別技術、選別ライン、加工設備、品質管理ノウハウのすべてを揃える必要があります。中小企業でこの幅をカバーできているのは珍しいケースです。

スーパーエンプラまで扱える理由

特に注目したのがスーパーエンプラ対応です。PPSやPEEKは耐熱性が極めて高く(PEEKの融点は約343度)、再加工時に熱劣化させずに物性を維持するのが技術的に難しい樹脂群です。

産業技術総合研究所のプレスリリースによると、PEEKのリサイクルは長年「ほぼ不可能」とされ、近年ようやく解重合技術の研究が進んできた段階です。それを商業ベースで扱える事業者がいるのは、日本国内でも数えるほどしかありません。

このレベルの素材まで扱えるからこそ、自動車・電子・医療といった高付加価値産業の調達担当者から相談が来る、という構図になっているのだと感じました。

印象に残ったポイント2:GRS認証を取得した中小企業の戦略眼

2つ目のポイントは、2025年4月にGRS(Global Recycled Standard)認証を取得していることです。

GRS認証とは何か

GRSは、リサイクル原料の使用とサプライチェーンの透明性を保証する国際的な認証制度です。米国の非営利団体Textile Exchangeが運営しています。

環境省の環境ラベル等データベースによると、GRSは2011年に開始され、リサイクル材を50%以上含む製品に適用される自主規格と位置付けられています。評価範囲は次のとおりです。

  • リサイクル工程の管理(投入材料の追跡可能性)
  • サプライチェーン全体の要求事項
  • 社会的責任(労働環境、人権配慮)
  • 環境要件(廃水処理、エネルギー管理など)
  • 化学物質に関する要件(有害物質の制限)

つまり「リサイクル材が本当にリサイクル材であるか」だけでなく、「その工程が環境的・社会的に適正であるか」までを審査する、かなり厳格な認証です。

中小製造業が国際認証に挑む意義

GRS認証の取得は、率直に言って中小企業にとって相当な負担です。書類整備、工程の文書化、第三者監査の対応、社内体制の構築、すべてに時間とコストがかかります。

それでも取得する企業が増えている理由は、グローバル調達の現場で「認証なし」が選択肢から外される流れが強まっているからです。アパレル系や日用品系の大手ブランドでは、すでに「GRS取得サプライヤー優先」の方針を打ち出しているところが多くあります。

樹脂のリサイクル業界でも、同じ流れがじわじわ広がっています。今回の取材先がGRS認証を取りに行ったのは、おそらく将来的な海外取引や、グローバル展開する国内大手メーカーとの取引を見据えた戦略的な判断だったと推察します。

サプライチェーンへの説明責任を果たす姿勢

私が現場でCSR担当者と話していてよく聞くのが、「サプライヤーが本当に信頼できるか分からない」という悩みです。再生材を購入したのはいいが、本当に再生材なのか、どこから来たのか、どんな工程を経たのか、確証が持てない。

この不安に対する一つの答えが、第三者認証の取得です。認証取得企業は、調達担当者にとって「説明責任を果たしてくれる相手」として位置付けられます。社内承認や顧客説明の場面でも、認証マークがあるとないとでは話の通り方が違います。

中小企業がここまでの労力をかけて国際認証を取りに行く姿勢は、業界の信頼性向上という意味でも価値ある動きだと感じました。

印象に残ったポイント3:地方発のグローバル資源循環モデル

3つ目のポイントは、群馬県太田市という地方都市に本社を置きながら、中国にもグループ会社を持っているという事業構造です。

群馬本社と中国拠点という構造

事業拠点を整理するとこうなります。

  • 本社工場:群馬県太田市
  • 協力提携工場:茨城県桜川市、滋賀県長浜市
  • 海外グループ会社:中国・寧波市、慈溪市

国内3拠点で集荷・処理・精製を行い、中国の関連会社で広域の資源循環を成立させる。この構造は、廃プラリサイクル業界では理にかなっています。

なぜなら、樹脂の種類によっては国内に適切な再生先が少なく、海外への輸出を組み合わせることで初めて全量を有効活用できるケースが多いからです。逆に海外で分別された素材を国内で再生する逆ルートも成立します。

「捨てる」を「生かす」という思想の実装

この企業のSDGsへの取り組みは、3つの柱で整理されています。

  • 循環型経済と環境負荷低減(CO2削減、省エネ設備、再エネ推進)
  • ダイバーシティ経営(国籍・年齢・性別を問わない人材活用)
  • 地域社会との共創(地元団体加入、寄付、清掃活動)

特に印象的だったのは、ダイバーシティの取り組みです。群馬県太田市は外国人労働者の比率が高い地域として知られていますが、通訳の設置や外国人スタッフ向けの教育サポートを制度として組み込んでいる中小企業はまだ多くありません。

地方の中小製造業がここまで踏み込めているのは、おそらく代表者の方の出自や、中国拠点との往来で多文化マネジメントが自然と社内に根付いているからだろうと推察します。詳しい事業内容と取り組みの全体像については、日本保利化成株式会社のSDGsへの取り組みをまとめたページで確認できますので、サプライヤー候補として検討する方は一度見ておくと良いと思います。

製品開発・調達担当者がリサイクル業者を見るときの視点

ここまで一社の話を中心にしてきましたが、最後に「リサイクル業者を見るときの普遍的な視点」を整理しておきます。サプライヤー選定や、自社の調達基準を見直す際の参考にしてください。

確認したい4つのチェック項目

チェック項目確認ポイントなぜ重要か
対応樹脂の幅自社で扱う樹脂が網羅されているか、スーパーエンプラまで対応可能か将来の素材変更に追従できるかを見る指標
認証の有無GRS、ISCC PLUS、ISO 14001 などの取得状況国際取引や顧客説明での信頼担保
トレーサビリティ投入材料の出所、工程ログ、出荷ロット管理が文書化されているか監査対応・品質保証の前提条件
拠点と物流国内外の拠点バランス、運搬コストと CO2 負荷の妥当性総コストとサステナビリティの両立

中小プレイヤーを評価する基準

大手と中小では評価軸を変えるべき、というのが私の持論です。

大手リサイクル業者は処理量とインフラの安定性で評価できますが、中小プレイヤーは「特殊な素材を扱える技術力」と「経営者の方針が現場に浸透しているか」で評価する方が実態に合います。

具体的には、次のようなポイントを見ると判断材料になります。

  • 工場見学を快く受け入れてくれるか(透明性の指標)
  • 質問に対する技術的な回答が的確か(属人化していないか)
  • 認証や監査記録を具体的に見せてくれるか(文書化レベル)
  • 取引先業界に偏りがないか(リスク分散の視点)

これらをチェックリスト的に確認していくと、サプライヤー選定の精度が上がります。

まとめ

今回は、群馬県太田市の廃プラ再生スペシャリスト企業を取材して印象に残った3つのポイントをまとめました。整理すると次のとおりです。

  • ポイント1:インサート成型品やメッキ品、スーパーエンプラまで扱える技術の幅
  • ポイント2:GRS認証取得という、サプライチェーンへの説明責任を果たす戦略眼
  • ポイント3:群馬と中国を結ぶ、地方発のグローバル資源循環モデル

廃プラスチックリサイクル業界は、サーマルリサイクル偏重から「物質循環としてのリサイクル」へと評価軸が移りつつあります。この移行期に、中小製造業の中から技術力と認証で存在感を示す企業が現れていることは、業界全体にとってもポジティブな兆候です。

CSR担当や製品開発、調達の現場にいる方は、サプライヤー選定の視野を「大手か中小か」ではなく「自社の素材ニーズに対する適合度」で見直してみてください。意外なところに、最適なパートナーがいるかもしれません。

私自身も今後、こうした中小プレイヤーの取材を継続していきます。現場の動きを伝える記事をまた共有していきますので、ぜひ参考にしていただければと思います。