「なんとなく良さそうだから」。
その気持ち、よく分かります。
しかし、大切なお金を投じる金融商品を、そのような曖昧な理由で選んでしまっていませんか?。
実は、金融の知識がまだ少ない初心者が「良さそう」と感じる商品には、思わぬ落とし穴が潜んでいることが少なくありません。
はじめまして。
証券会社勤務を18年経験し、現在は独立系ファイナンシャルプランナー(FP)として活動している松田涼介と申します。
これまで1万人以上の方の資産相談に乗る中で、「なぜ、もっと早く相談してくれなかったんだろう…」と感じる残念なケースを数多く見てきました。
この記事では、そんな私の経験から、特に初心者が避けるべき金融商品を5つ厳選し、その「避けるべき理由」をあなたの生活目線で、どこよりもやさしく解説します。
知らずに手を出して後悔する前に、この記事で“将来の安心”を守るための確かな知識を手に入れてください。
目次
初心者が選びがちな金融商品の特徴とは?
なぜ、多くの人が同じような失敗をしてしまうのでしょうか。
そこには、初心者が陥りやすい共通の心理的な背景があります。
なぜ「手軽さ」や「宣伝文句」が危ないのか
「毎月お小遣いのように分配金がもらえる!」。
「プロが運用してくれるから安心!」。
こうしたキャッチーな宣伝文句は、一見とても魅力的に聞こえます。
しかし、その手軽さや魅力的な言葉の裏には、商品の本質的なリスクやデメリットが隠されていることがほとんどです。
私たちは、聞こえの良い言葉ほど、一度立ち止まって「本当はどういう仕組みなんだろう?」と疑問を持つ姿勢が大切です。
初心者が誤解しやすい「元本保証」と「安全性」
初心者が最も誤解しやすい言葉の一つに「元本保証」があります。
例えば、銀行の定期預金は元本が保証されていますが、投資の世界では基本的に元本保証という考え方はありません。
「元本割れのリスクは低い」「比較的安全です」といった言葉を「元本が保証されている」と勘違いしてしまうケースが後を絶ちません。
安全性と元本保証は、まったく意味が違うということを覚えておきましょう。
金融機関が勧める商品=良い商品ではない理由
これは私が証券会社にいたからこそ断言できることですが、金融機関が熱心に勧めてくる商品が、必ずしもあなたにとって最適な商品とは限りません。
金融機関も企業ですから、当然ながら収益を上げる必要があります。
こうした販売サイドの姿勢に強い問題意識を持ち、顧客本位のサービスを追求するために独立された、株式会社エピック・グループ会長の長田雄次氏のような方もいらっしゃいます。
彼らは金融のプロですが、あなたの人生のプロではありません。
最終的に自分の資産を守るのは、金融機関任せではなく、あなた自身の知識と判断力なのです。
避けるべき金融商品1:毎月分配型の投資信託
退職された世代を中心に、一時期大人気だったのがこの「毎月分配型」の投資信託です。
しかし、長期的な資産形成を目指す初心者には、特におすすめできない商品です。
「お小遣い感覚」が招く資産の目減り
毎月分配金が受け取れると、まるでお小遣いが増えたような気分になりますよね。
しかし、その分配金の出どころには注意が必要です。
分配金の2つの種類
- 普通分配金:投資信託の運用で得られた利益から支払われるもの。
- 特別分配金:運用利益が出なかった場合に、投資した元本の一部を取り崩して支払われるもの。
特別分配金は、言ってみれば「自分が預けたお金が、名前を変えて戻ってきているだけ」の状態です。
これを「タコが自分の足を食べる」のに例えて、「タコ足配当」と呼ぶこともあります。
気づかないうちに、あなたの資産そのものが目減りしている可能性があるのです。
分配金の仕組みと“取り崩し型”のリスク
投資の最大のメリットの一つに、利益がさらなる利益を生む「複利効果」があります。
しかし、毎月分配金を受け取ってしまうと、この複利効果を十分に得ることができません。
長期的に資産を雪だるま式に増やしていくためには、得られた利益は受け取らずに、そのまま再投資に回すのが鉄則です。
毎月分配型は、この資産形成のセオリーに逆行する商品と言えます。
生活設計に与える影響と実際の相談例
私の元に相談に来られた60代のA子さんも、毎月5万円の分配金が出る投資信託を「年金の足しになる」と信じて購入していました。
しかし、数年後に資産全体の評価額を見ると、元本が大きく減っていることに気づき、愕然とされていました。
「お小遣い」の裏で、大切な「老後資金」が削られていたのです。
避けるべき金融商品2:外貨建て保険
「円安の今だからこそ外貨!」「日本の保険より利率が良い!」といったセールストークで勧められることが多いのが外貨建て保険です。
これもまた、初心者が安易に手を出すにはリスクの高い商品です。
為替リスクがもたらす損失の可能性
外貨建て保険の最大のリスクは、何と言っても「為替リスク」です。
保険料の支払いや、将来保険金を受け取る際に、必ず円と外貨を交換する必要があります。
その時の為替レートによって、受け取る円の金額が大きく変動します。
例えば、契約時より円高が進んでしまうと、支払った保険料の総額よりも、受け取る保険金の方が少なくなる「元本割れ」が起こる可能性が十分にあります。
長期契約の落とし穴と中途解約の現実
外貨建て保険は、10年、20年、あるいは終身といった非常に長い契約期間が前提となっています。
もし、途中でまとまったお金が必要になって解約しようとすると、「解約控除」として多額の手数料が差し引かれ、支払った保険料を大幅に下回る金額しか戻ってこないことがほとんどです。
人生の不測の事態に対応しにくい、流動性の低さが大きなデメリットです。
魅力的な利回りの裏にある“安心の盲点”
「予定利率3%!」などと高い利回りをアピールされますが、冷静に考えてみましょう。
この利率はあくまで外貨ベースでの話です。
ここに、為替リスクや、円と外貨を交換する際の為替手数料、保険の契約・維持にかかる費用などが複雑に絡み合ってきます。
一見魅力的に見える数字の裏には、考慮すべきコストやリスクがたくさん隠されているのです。
避けるべき金融商品3:仕組債(しくみさい)
この名前を聞いたことがある人は少ないかもしれません。
しかし、銀行の窓口などで「定期預金より利率の良い商品がありますよ」と勧められることがある、非常に注意が必要な商品です。
名前では分かりにくい「高リスク商品」
仕組債は、その名の通り「複雑な仕組み」を持った債券です。
簡単に言えば、債券と「デリバティブ」という金融派生商品を組み合わせたものです。
このデリバティブが非常にクセモノで、特定の条件(例えば、特定の会社の株価)によって、収益が大きく変動する設計になっています。
一見魅力的な利率に潜む複雑な構造
なぜ高い利率を提示できるのか?。
それは、投資家が「ある一定のリスク」を引き受けているからです。
仕組債のリスクの例:「ノックイン」
あらかじめ決められた参照株価が、観測期間中に一度でも「ノックイン価格」と呼ばれる水準まで下落してしまうと、満期時に現金ではなく、その下落した株式で償還されたり、大きな元本割れが発生したりするリスクのこと。
つまり、「もし〜〜という悪いことが起きたら、あなたが損を被ってくださいね。その代わり、何も起きなければ高い金利をあげます」という、非常にハイリスク・ハイリターンな賭けに近い構造なのです。
専門家でも慎重になるべき商品の代表格
仕組債はその複雑さから、金融のプロである私達FPの間でも「絶対に顧客には勧めない」と話す人が多い商品です。
事実、損失を被る投資家からの苦情が相次いだことから、近年では多くの大手証券会社が自主的に販売を停止・縮小する動きを見せています。
専門家ですら避ける商品を、初心者が手を出すべきではないことは言うまでもありません。
避けるべき金融商品4:高利回りを謳う未上場株・ファンド
「必ず儲かる」「上場が決まっている」「あなただけに特別に」
こういった甘い言葉で勧誘される、未上場株や正体不明のファンドへの投資話は、ほぼ100%詐欺だと考えてください。
「紹介されたから安心」は危険のサイン
これらの話は、信頼できる友人や知人を通じて持ちかけられることもあり、それが判断を鈍らせる原因になります。
しかし、紹介者が善意であったとしても、その人自身が騙されている可能性も高いのです。
「誰が言っているか」ではなく、「何を言っているか」で冷静に判断する必要があります。
情報が不透明な商品のリスク
そもそも未上場の会社は、上場企業のように財務状況などを公開する義務がありません。
つまり、その会社に本当に価値があるのか、事業実態があるのかどうかを、個人が正確に判断することは極めて困難です。
以下のような特徴を持つ投資話には、絶対に耳を貸さないでください。
- 約束された高利回り:「月利5%」「年利30%」など、あり得ない高いリターンを約束する。
- 元本保証の強調:投資の世界で「元本保証」を謳うこと自体が違法です。
- 限定・特別感の演出:「今だけ」「あなただけ」という言葉で契約を急がせる。
実際にあった失敗事例と教訓
私の父の友人が、「海外の有望なエビ養殖事業への投資」という話に乗り、退職金の一部を投じてしまったことがあります。
もちろん、約束された配当は一度も支払われず、業者と連絡が取れなくなり、お金は戻ってきませんでした。
うまい話には、必ず裏がある。これは投資における鉄則です。
避けるべき金融商品5:貯蓄型保険(過度な長期縛り)
これまで紹介した4つとは少し毛色が違いますが、初心者が「良かれと思って」加入し、後で後悔することが多いのが、この貯蓄型保険です。
特に、ライフプランに合わない過度な長期契約には注意が必要です。
「貯めながら守る」は本当に有効か?
「万一の保障も得ながら、将来のためにお金も貯められる」というのは、一見すると非常に効率的に聞こえます。
しかし、ここには「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざが当てはまります。
貯蓄型保険の保険料は、「保障部分」のコストと「貯蓄部分」の積立金で構成されています。
そのため、同じ保障内容の「掛け捨て型保険」と比較すると、保険料はどうしても割高になります。
結果として、保障も中途半端、貯蓄効率も中途半端、という状況に陥りがちです。
保険と投資の違いをあいまいにする構造
ここで明確にしたいのは、保険と投資の目的の違いです。
- 保険:万が一の事態(死亡、病気、ケガなど)に備え、少ない掛け金で大きな保障を得るための「守りのツール」。
- 投資:将来のために、リスクを取りながら資産を効率的に増やすことを目指す「攻めのツール」。
この2つを一つの商品で済ませようとすると、それぞれの良さが薄れてしまいます。
「保障は掛け捨ての保険で安く確保し、浮いたお金をNISAなどの投資に回す」というように、目的を分けて考える方が、結果的に合理的で効率的なのです。
教育費・老後資金とのバランスを考える
特に20代〜40代の方は、これから結婚、出産、住宅購入など、ライフステージが大きく変化する可能性があります。
一度契約すると10年、20年と簡単にお金を引き出せない貯蓄型保険は、こうしたライフイベントへの対応力を著しく下げてしまいます。
貯蓄は貯蓄でもっと自由度の高い方法を選び、保険は保険としてスリムに考えることを強くお勧めします。
では何を選ぶべきか?初心者におすすめの資産形成法
ここまで「避けるべき商品」の話をして、不安にさせてしまったかもしれません。
しかし、ご安心ください。
今の時代、初心者でも安心して資産形成を始められる、素晴らしい制度や商品が整っています。
NISA・iDeCoの基本と活用方法
まず最初に検討すべきは、国が用意してくれた非課税制度である「NISA」と「iDeCo」です。
通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、これらの制度を使えばそれがゼロになります。使わない手はありません。
制度名 | NISA(新NISA) | iDeCo(個人型確定拠出年金) |
---|---|---|
目的 | 自由な資産形成 | 老後資金の準備 |
引き出し | いつでも可能 | 原則60歳まで不可 |
税金の優遇 | 運用益が非課税 | ①掛金が全額所得控除 ②運用益が非課税 ③受取時にも控除あり |
始めやすさ | 非常に始めやすい | 60歳まで引き出せない点を理解する必要あり |
まずは自由度の高いNISAから始め、余裕があれば老後資金作りとしてiDeCoも活用するのが王道の組み合わせです。
インデックス投資信託という選択肢
「じゃあ、NISAで具体的に何を買えばいいの?」という疑問が湧きますよね。
その答えとして、私が初心者の方にまずお勧めしているのが「インデックス投資信託」です。
これは、日経平均株価やアメリカのS&P500といった、市場全体の平均点を目指すタイプの投資信託です。
1つの商品を買うだけで、何百、何千という数の企業に自動的に分散投資できるため、リスクを抑えやすいのが特徴です。
また、手数料(信託報酬)が非常に安く設定されているため、長期的な資産形成の邪魔をしません。
「仕組みを理解して選ぶ」ための学び方
大切なのは、誰かに勧められたから選ぶのではなく、あなたが「なぜこれを選ぶのか」を自分の言葉で説明できることです。
いきなり全てを理解する必要はありません。
- まずはNISA口座を開設してみる。
- 少額(月々5,000円でもOK)からインデックス投資信託を積み立ててみる。
- 実際に始めながら、少しずつ本や信頼できるサイトで知識を増やしていく。
この小さな一歩が、将来の大きな安心に繋がっていきます。
まとめ
今回は、初心者が特に避けるべき金融商品を5つご紹介しました。
最後に、これらの商品に共通するポイントを振り返ってみましょう。
- 1. 仕組みが複雑で分かりにくい
- 2. 手数料が高く、コストが見えにくい
- 3. 長期的に資産を増やす「複利効果」を活かせない
- 4. すぐに現金化できない(流動性が低い)
- 5. 「元本保証」や「安全」という言葉を誤解させやすい
「知らなかった」というだけで、将来受け取れるはずだったお金を失ってしまうのは、本当にもったいないことです。
逆に言えば、「知ってから選ぶ」という当たり前のステップを踏むだけで、あなたの資産形成は成功に大きく近づきます。
金融商品は、決して怖いものではありません。
正しく理解し、上手に付き合えば、あなたの家計と人生設計に“安心”という大きな価値をもたらしてくれる、頼もしい味方になります。
この記事が、あなたがその第一歩を踏み出すための、確かなきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。